6年間も医学・歯学教育をしている国は欧米にはありません。

ヨーロッパは4年か5年、米国は4年です。

戦後、米国は日本にも4年制大学卒業者を医学部・歯学部の入学資格にするように日本に求めました。

しかし、日本の医学・歯学教育界はこれに難色を示し、2年間の大学教育修了者を、医学部・歯学部への入学資格にするように妥協策を提案しました。

この2年間の大学教育を、医学進学課程、歯学進学課程と呼びます。

昭和24年国立大学設置法で、進学課程2年間 + 医学部・歯学部4年間となりました。

当初は、他大学に進学課程があったのですが、次第に、各医学部・歯学部の構内に進学課程を持つ様になりました。この傾向は、医科大学、歯科大学などの単科大学に特にみられるようになり、学外からみると、医学部・歯学部は6年間ということになりました。

昭和48年大学教育法第55号改正によって、6年間一貫教育となりました。

さらに、平成3年大学設置基準一部改正(大綱化)により、教養科目と専門科目の区別をなくし、各大学にカリキュラムの自由化を認めました。

以上のような経過から、日本の医学部・歯学部6年間教育が生まれたのです。

日本は、学生の臨床実習で治療させないという特徴があります。医師・歯科医師免許をとってから治療を経験するのです。

このシステムのため、日本の医師、歯科医師の臨床能力への国際的評価は低く、アジアの旧植民地諸国の医師・歯科医師免許は、ヨーロッパで有効なのに日本の免許は無効です。

学費を少なくするという欧米人の合理性は、日本の教育システムの発想にはなく、長期教育が高等教育であると妄信しているのではないかと思います。

農学部、薬学部が4年→6年になり、看護学部は2年→4年、歯科衛生士2年→3年。国民にとっても、学生にとっても、学生の親にとっても、いい制度とは、私には思えません。

私立大学の医・歯・薬学部の年間授業料は400〜600万円。2年間の延長で1,000万円も授業料が増えます。欧米並の教育期間に短縮することを考えればいいのにと思いませんか?

欧米が、8名前後の少人数教育を導入して、Teaching(教えること)からLearning(学生自らが学ぶこと)へと、教育システム改革を進めている中で、いまだに旧態善とした大講義室での講義形式の教育を行っている。

臨床実習では、診療科数を増やしたために、臨床実習期間が1週間(実質5日)しかない診療科がある。たった5日間で何を教えられるのでしょうか?

こういう状況の医学教育現場から、有能な医師・歯科医師が育成されるとは思えないのです。