最近、インプラントが開業歯科医院で盛んに行われています。骨内に金属製の支柱を埋め込み、その上部に義歯や歯冠補綴などの上部構造を装着するものです。

骨内に埋め込むには、当然のことながら、歯肉を剥離し、骨にドリルで穴を開け、金属製のインプラントを埋め込む手術を行わなければなりません。

手術の技術を向上させるには、経験のある指導者のもとで多くの手術の研修を積むことが大事なのですが、それが、インプラントになじみのない日本ではできる環境にありません。つまり、技術的に未熟な歯科医が多い。

医療費用は100万〜200万前後となります。
それだけの医療費用をかけて、何年間使えるのか? これが以外に短いのです。

ところが、1本25万円と言われました、とか、30万円と言われました。そういう説明を受けている人たちがおられます。それは埋め込む金属製の支柱だけの費用です。その上に保険外の高額な歯が入るのです。

先週は2人、他の歯科でインプラントを勧められたと言われて相談に来られました。

「3本と言われたから、まあ100万円なら出せないこともないけど・・・」。そう言われましたが、それは支柱3本の値段だけです。

その上に取り付ける歯の説明を受けていないでしょう?と、お聞きすると、大変驚かれました。インプラントを勧める歯科医は気をつけないと、民事訴訟を起こされたら「説明義務違反」で敗訴します。

たくさんのインプラント症例を経験している歯科医師は少ないと思います。

歯科医院がインプラントに注目する背景には、政府の政策で削減され続けている歯科医療費の問題があり、医院経営改善の活路を高額な保険外医療のインプラントに求めていることもあります。



インプラントについて、森昌彦先生は、季刊 歯科診療の2006年冬号に、以下のような趣旨を発言されています。

「大学では最近講座ができました。全国的にインプラントがアンダーグラヂュエートで教えられているかどうかは疑問ですね。国家試験の題材にもなっていないので、学生は勉強しないでしょうね。 インプラントのクレームというのは、保険診療外で料金を高く取っているという経済的なバックグランドがあるから問題があると思いますね。しかし、インプラントの世界的なメーカーは、欧米や日本で儲けないといけない。同じものをインドでは15分の1くらいで売っています。

 ・・・中略・・・  

インプラントをやることによって収入を上げるというような経済的な問題でセミナーなどが行われていますね。そういうのは世界的な傾向なのですが、インプラント自体は必ずしも悪くはないと思います。それとインプラントをやる人がもっと考えてほしいのは、咬合高径を上げるということです。歯槽頂をずっと高くしてインプラントを入れる。歯というものは、歯冠と歯根の長さが1対2の割合が必要ですね。ところが1対1の割合が多い。骨の中に入れるインプラント体の長さのことばかりを重要視しますが、補綴学的なトータルな議論をしていないように思います。そして、これからの更なる高齢化社会においてはやはりデンチャーも重要です。」