最近の歯科医院は、夜遅くまで診療をしています。

仕事が終わって治療を受けられる利点は、確かにあります。それなら、なぜ、内科、耳鼻科、眼科、皮膚科などの科は、歯科のように遅くまで診療しないのでしょうか?

1960年には全国に歯学部は7大学でした。私が受験した1970年頃には15校。それが70年代の厚生省の方針で、歯学部は飛躍的に増設され、2005年の現在では全国には29校の歯学部があります。

1970年、全国の歯科医師数は3万5千人でした。それが2000年には9万857人に達したのです。30年間で2.5倍に歯科医師数は増加しています。2005年の今や、歯科医師過剰の時代が到来しているのです。

なんと、歯科医師数が増えて、コンビニの数よりも歯科医院の数の方が多いのです。かつて裕福な職業といわれた開業歯科医に淘汰の波が押し寄せ、廃院も後を絶たないのです。

夜遅くまで歯科医院が診療を行う理由は、こうした歯科医院過剰という背景があります。

歯科治療は、危険を伴います。

局所麻酔によるショック。高速の切削器具を口腔内で使用し、それによる口腔内損傷の危険性。抜歯後の異常な出血。金属冠などを飲み込ましたり、気管の方に入ってしまう危険性。

近隣の総合病院がそういう事態に対応できる状況にあればいいのですが、夜間の勤務体制は、通常一人の当直医と、夜勤体制のわずかな医療職員。

私は24年間山口大学歯科口腔外科に勤務して、歯科口腔外科の当直をしていました。時間外の緊急医療体制が、いかに、不十分なものかを知っています。

夜遅くまで診療している歯科医院をみるにつけ、何事もないことを祈ります。