シンガポールのチャンギ国際空港には深夜1時に着いた。

アジアの空港は、これまでの経験では、どこも怖い。急いでタクシー乗り場へ行き、行き先のホテル名を告げ、車は動き出した。運転手もきちんとしている。なんとか危険は脱したと思った。

車窓から街並みを見ていると随分きれいな建物であり、街も明るい。電力は十分に供給されているようだ。

シンガポールは独裁政治が唯一成功した国だと言われる。翌朝、街の中を歩いたが、とてもアジアとは思えない。美しい街路樹、歩いている人たちも実に垢抜けている。

できたばかりの歯学部を訪問した。手術室も最新設備だが、まだ、使用している痕跡はない。やがて、アジア口腔癌学会の歯学部見学ツアーは、観光ツアーに変わり、大いにもてなされた。

学会では、教育講演が行われる。これが、どれもこれも白人なのである。これは、確か、アジアの学会のはずなのだが・・・。同じことはフィリピンの学会でもあった。要するに、アジアはまだ植民地と考えられているのである。

ロンドン大学の教授に、アジアに大学院はいらない。大学院に行きたければ英国にくればいいと面と向かって言われたことがある。いけ好かない奴だった。

アジアからの参加者たちは貧しい。スリランカの歯科医から話しかけられ、ホテルの私の部屋からスリランカへ電話させてくれと頼まれて、承諾した。

すると、今度は、ホテルの領収書をくれないかと言い出した。一泊100ドル以上の部屋だったと思う。100ドルといえば、スリランカでは大金である。何泊かするから、その領収書を使って、帰国したら勤務先の大学からお金を得ようと考えたのだろう。

悲しいことだが、シンガポールは例外的であり、アジアは、まだまだ貧しい。